国内小説– category –
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『私をくいとめて』感想|他人と関わりあうことへの不安や葛藤、希望を描いた一冊
「だってあなたは私ですから。見放したくても見放せません。いつでも一心同体です」 悩んだとき、困ったとき、アドバイスがほしいときは頭の中のもう一人の私「A」に相談できるから、なんの問題もなく「おひとりさま」を満喫する主人公・みつ子。 根本的に... -
『荒城に白百合ありて』感想|幕末の動乱の中で燃え上がる冷たい恋の物語
歴史上の出来事は、昔から小説の題材としてよく使われています。 その中でも、人気のあるのが幕末期。 坂本龍馬や新撰組など、さまざまな立場の人物が取り上げられています。 現在放送中の大河ドラマも幕末が舞台ですね。 さて、今回取り上げる作品も、そ... -
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』感想|母の死…いつか確実にくるその時を静かに真っ直ぐに描く愛の物語
当たり前にいつもそばにいる人。 いなくなることなんて考えられない。 死ぬことのない人なんてこの世にいないとわかっていても、それは今ではないと信じてやまない。 それが確実に迫っていると知った時の絶望と恐怖。 この物語のテーマは母親の死ですが、... -
『淋しい狩人』感想|見えてるけど見えない現実。本が引き起こすミステリー
宮部みゆきのミステリー作品といえば、誰もが知ってる有名な作品は数知れず。 『模倣犯』をはじめドラマ化や映画化、アニメ化された作品も数多くある有名な作家です。 個人的には、怪奇的なミステリかつ時代小説を書くイメージの強い作家です。 ミステリー... -
『あつあつを召し上がれ』感想|素朴な食卓を彩るのは小川糸の描写力
あなたにはありますか? 誰かといっしょに食べたやさしいごはんの記憶が。 それは家族と、友人と、はたまた赤の他人と食べた料理でしょうか。 記憶に残るやさしいごはんの味はなにもすべてあたたかい雰囲気のなかで食べたものとは限らないでしょう。 時に... -
『碧空』感想|無垢な青年たちは長野まゆみの世界で求め合う
思春期の男の子という存在は、元気で遊び盛りな一方で触れるともろく崩れそうな危うさと儚さがあります。 この作品は凛一シリーズと呼ばれる4部作からなる物語のひとつですが、ここで紹介するのは2作目の『碧空』で、4作通して思春期の男の子たちの繊細で... -
『イノセント・デイズ』感想|死刑執行の日、彼女が望んだものとは
2015年に日本推理作家協会賞を受賞した作品です。 話の中心となるのは、残忍な放火殺人事件で死刑囚となった田中幸乃30歳。 その凶行ゆえに世論にさらされることになった彼女と、その事実を知った周りの人間の葛藤が描かれています。 見えてくるさまざまな... -
『クララとお日さま』感想|AIを搭載したロボットクララと少女が育む交流に生きることの意味を問う
読書とは、頭の中でその話を想像しながら読みます。この小説は何だかよく分からない物や、言葉が数多くでてきます。 その中には言葉の説明がとくにされることがない物もあり、さらには主人公である人口親友というロボットクララの目線で物語が語られていき... -
『古都』感想|古都の移りゆく季節とともに紡がれる双子姉妹の物語
川端康成といえば日本を代表する小説家で、その名前を一度は聞いたことがあるでしょう。 けれど小説をまだ読んだことがない方にとっては純文学のイメージがあり、読みにくいだろうと思っているのではないでしょうか? しかし川端康成の文章はとても読みや... -
『ウツボカズラの甘い息』感想|柚月裕子が物語に仕掛けた甘い罠
皆さんはウツボカズラをご存知でしょうか。 作品のタイトルともなっているウツボカズラは、熱帯に生息する食虫植物。 袋のある見た目が印象的なこの植物は、甘い蜜の匂いで虫たちをおびきよせ、かかった獲物を自身に吸収してしまいます。 この作品は、そん...